技能実習生や特定技能外国人を受け入れている企業の皆さまは、仕事の指導だけでなく、休日の生活についても必要に応じて説明する機会があると思います。
特に地方では、海や川、山林などの自然が身近にあります。そこで注意したいのが、魚介類の違法な採捕、いわゆる「密漁」や、野生動物の無断捕獲、さらには他人が飼育・管理している動物の持ち去りです。
日本では、自然の中にいる生き物であっても、自由に捕まえてよいとは限りません。しかし、日本の法律や地域ごとのルールを十分に知らないまま行動し、トラブルにつながる可能性があります。
今回は、こうした問題を未然に防ぐために、外国人従業員を雇用する企業が知っておきたい注意点と、日頃からできる対策をご紹介します。
なぜトラブルが起きるのか?
トラブルの背景には、法律や地域のルールに対する理解不足がある場合があります。
例えば、次のような認識には注意が必要です。
- 「自然の中にいるのだから、自由に捕ってもよい」
海岸の貝類や川の魚などを見て、自分で食べる分なら問題ないと思ってしまうケースです。しかし、漁業権や採捕禁止の規則などにより、捕ることが禁止されている場合があります。 - 「少しだけなら問題ない」
販売する目的ではなく、自分で食べるためであっても、違法な採捕になることがあります。 - 「野原にいる動物なら、誰のものでもない」
野生動物の捕獲には法律上の制限があります。また、山や牧草地などで見かけた動物が、実際には誰かに飼育・管理されている家畜である可能性もあります。
もちろん、こうした認識が特定の国や地域の人に共通しているわけではありません。大切なのは、出身国や文化の違いを決めつけることではなく、日本で生活するうえで必要なルールを具体的に伝えることです。
違反すると、どのような問題が起きるのか?
「知らなかった」「自分で食べるだけだった」という理由だけで、違法行為が認められるとは限りません。
1.刑事罰を受ける可能性がある
例えば、アワビ、ナマコ、シラスウナギなどの特定水産動植物を、法律で認められた条件によらず採捕した場合、漁業法に基づき、3年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、野生鳥獣の捕獲も原則として規制されており、違法に捕獲した場合には、鳥獣保護管理法に基づく刑事罰の対象となることがあります。
他人が所有・管理するヤギなどの家畜を無断で持ち去れば、状況によっては窃盗罪などに問われる可能性もあります。
なお、すべての魚介類の採捕が一律に禁止されているわけではありません。対象となる生き物や場所、使用する漁具、漁業権、地域の規則などによって扱いが異なります。
2.在留資格や仕事に影響する可能性がある
刑事事件になった場合、本人の在留資格や今後の日本での生活に影響が及ぶことがあります。
ただし、違反すれば必ず在留資格が取り消されたり、退去強制になったりするわけではありません。実際の影響は、犯罪の内容、刑事処分、在留資格などによって異なります。
企業にとっても、従業員が事件に関与すれば、対応に時間を取られるだけでなく、取引先や地域社会からの信頼に影響するおそれがあります。
だからこそ、問題が起きてから対応するのではなく、入社時や生活指導の機会に、あらかじめルールを伝えておくことが重要です。
雇用主が実践したい4つの対策
1.「自然の中にいる生き物でも、自由に捕ってよいとは限らない」と伝える
まずは、基本的な考え方を共有しましょう。
「他人の畑にある野菜を勝手に持ち帰ってはいけないのと同じように、海や川、山の生き物も、自由に捕獲できるとは限りません」
このように、身近な例を使って説明すると、理解してもらいやすくなります。
特に、自分で食べる分だけでも違法になる場合があることは、はっきり伝えておきたいポイントです。
2.地域の禁止事項を、写真やベトナム語を使って説明する
海や川が近い地域では、アワビ、ナマコ、サザエ、アサリなど、地域で注意が必要な魚介類について、写真を使って説明すると効果的です。
また、山林や牧草地が近い地域では、野生動物の捕獲禁止や、家畜・農作物を無断で持ち去ってはいけないことも伝えましょう。
掲示物を作る際は、日本語だけでなく、ベトナム語も併記するのがおすすめです。
ただし、魚介類や漁具のすべてが一律に禁止されているわけではありません。地域の漁業協同組合や自治体などに確認し、実際の地域ルールに合った内容にすることが大切です。
3.捕獲に使う道具や行為について、具体的に説明する
魚介類や野生動物を捕まえる道具には、使用できる場所や方法が制限されているものがあります。
「この道具を使えば必ず違法」という説明ではなく、地域のルールや対象となる生き物によって、使用が禁止・制限される場合があることを伝えましょう。
判断に迷ったときは、自分で判断して捕獲せず、自治体や漁業協同組合などに確認するよう指導してください。
4.休日を楽しむための代替案も紹介する
禁止事項を伝えるだけでなく、安全に楽しめる方法も案内しましょう。
例えば、次のような方法があります。
- 釣りが認められている施設や場所を利用する
- 必要な遊漁券や許可、地域のルールを事前に確認する
- 食べたい魚介類は、スーパーや直売所などで購入する
- 地域の観光施設や自然体験イベントを紹介する
こうした情報を提供することは、外国人従業員が地域で安心して暮らすためのサポートにもつながります。
ルールを事前に伝えることが、本人と会社を守る
密漁や野生動物の無断捕獲を防ぐために大切なのは、問題が起きてから注意することではありません。
日本の法律や地域のルールを知らないまま、本人が思いがけずトラブルに巻き込まれることを防ぐために、日頃から具体的に説明しておくことです。
特に、地方で外国人従業員を受け入れている企業では、海や川、山など、地域の自然環境に合わせた生活指導が役立ちます。
「やってはいけないこと」だけでなく、「なぜいけないのか」「代わりに何ができるのか」まで伝える。
こうした丁寧なコミュニケーションが、外国人従業員本人を守り、企業と地域社会との信頼関係を築く第一歩となります。


