日本で働くベトナム人技能実習生の中には、まじめで優秀な人材が多くいます。
3年間、あるいは5年間の実習期間を終えたあとも、特定技能1号として日本に残り働いてほしい、と願う企業は少なくありません。
しかし、実際には彼らを引き止めることは決して簡単ではありません。

少し立場を逆にして考えてみましょう。
もし自分がベトナム駐在員として数年間を過ごすとしたらどうでしょうか。
異国の文化や言語の中で、家族とも離れ、日々仕事に打ち込む生活です。
任期が終わり、やっと日本に帰国できる日を指折り数える――そんな気持ちになるのは自然なことです。
技能実習生にとっても同じで、「本来の生活に戻りたい」という気持ちは強く理解できるはずです。

もちろん、日本での就労を続ける道も用意されています。
特定技能2号の在留資格を取得すれば、家族を呼び寄せて一緒に暮らすことも可能です。
ただし、ここには大きなハードルがあります。
日本語に不自由な配偶者が生活していけるのか、子どもが日本の学校に適応できるのか――これは、家族の将来を大きく左右する選択となります。
そのため、多くの人は慎重にならざるを得ません。単に「日本に残りたい」という気持ちだけでは踏み切れない現実があるのです。

それでも、日本で長く働くことを決断する人もいます。
彼らが選択する背景には、「ここでなら安定した収入が得られる」「専門性をさらに高めたい」といった理由があるでしょう。
だからこそ、企業側が優秀な人材に長く働いてもらいたいと考えるなら、相応の待遇を用意することが不可欠です。
給与や福利厚生だけでなく、家族を含めた生活サポート、日本語教育の支援など、より広い視点での環境整備が求められます。

「長く海外で働く」ということは、本人にとっても家族にとっても大きな決断です。
その重みを理解したうえで、企業側も誠意をもって応えていくことが、日本で働き続けたいと思ってもらえる一番の近道ではないでしょうか。