「新しく受け入れた外国人材への日本語教育、就業時間内で行うべきか、それとも時間外でよいのだろうか……」
外国人材の受け入れを開始した、あるいはこれから検討している企業の担当者様や経営者様の間で、このような悩みを抱えるケースが増えています。
「せっかく研修を手配したのに勉強してくれない」という現場の苦悩
「業務に直結するのだから時間内にすべき」という意見もあれば、「プライベートの時間に自主的に勉強してほしい」という本音もあるでしょう。
しかし、せっかく日本語研修の環境やオンラインレッスンを会社負担で手配したにもかかわらず、「当人が全く受講せず、費用と時間が無駄になってしまった」という失敗談は後を絶ちません。
良かれと思って用意した教育環境が形骸化していくのは、受け入れ側としては非常に辛いものです。
日本語教育のタイミングは「学習者本人の意識」次第
結論からお伝えすると、日本語教育を就業時間内に行うべきか、就業時間外でよいかは「学習者本人の意識(在留資格や学歴に伴う学習習慣)」によって明確に切り分けるのが正解です。
当該者の日本語学習へのコミットメントを見定めることで、教育コストの無駄遣いを防ぎ、効率的に現場のコミュニケーション力を底上げすることができます。
① 技人国ビザ(大卒)の人材:就業時間外でもOK
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格で入国した高学歴のベトナム人材(大卒など)の場合、そもそも「自分で勉強をする習慣がある」ため、就業時間外での学習でも十分に効果が期待できます。
彼らはキャリアアップや自己成長への意識も高く、自発的に取り組む可能性が非常に高い層です。
② 技能実習生(高卒など)の人材:就業時間内が推奨
一方で、高卒の技能実習生の場合、もちろんいくらでも例外はありますが、「勉強する習慣そのものがない」人の割合が高くなります。
この層に対して「就業時間外に各自で勉強するように」と手配しても、当人が受講しない…といった状況が起こりがちです。
そのため、確実に日本語を定着させたい場合は、就業時間内に研修を組み込む形をとるのが現実的です。
受け入れ側が認識すべき「技能実習生の現実」と対策
なぜ技能実習生においてこのような差が生まれるのでしょうか。そこには彼らの「来日目的」が深く関係しています。
まずは彼らの目的が「勉強ではなくお金」だと認識すること
最近勉強する気のない外国人材が増えたように思うかもしれませんが、そもそも日本語を勉強することではなく、お金を稼ぐことが最大の目的(海外出稼ぎ)であることを受け入れ側も認識することがまず重要です。
理由:「日本語がなくても何とかなる」と考えている
彼ら彼女らの中には、以下のような意識を持っている層が一定数存在します。
- 「日本語ができなくても仕事ができればいい」
- 「先輩がいれば大丈夫だから勉強いらない」
最も良いのは最初からこうした層を採用しないことですが、面接時点で彼らの本音や日本語学習へのコミットメントを見抜くのはかなり難しいのが現実です。
また、技能実習生であれば原則として解雇はできないため、3年の付き合いで辞める前提で割り切って付き合う必要性も出てきます。
コミットメントを強制的に生み出す「2つの仕組み」
彼らの意識だけに頼って「就業時間外に勉強しなさい」と言っても効果は薄いですが、「日本語の習得度」と「彼らの最大目的(お金・キャリア)」を直結させる仕組みを作れば、学習へのコミットメントを意図的に高める(学習しない人を少なくする)ことが可能です。
【勉強を自発的にさせるための実践的アプローチ】
- 最初の採用の時点で、特定技能1号に移行する条件を明確に決めておく
「3年後に日本に残ってもっと稼ぎたいなら、〇年目までに日本語能力試験〇級に合格すること」と最初から提示しておくことで、ゴールが可視化されます。- 日本語能力に応じて昇給を決めておく
「日本語ができるようになれば、その分給料が増える」というダイレクトなインセンティブを設定します。評価が明確になれば、稼ぐために必死に勉強を始めます。
意欲を完全に100にすることは難しくても、こうした現実的な仕組みを取り入れることで、時間外であっても当人が積極的に受講するようになり、教育が形骸化するリスクを大幅に減らすことができます。
まとめ:日本語研修を始める前にコミットメントを見定める
外国人材への日本語教育を「時間内」にするか「時間外」にするかは、企業側の都合だけで決めるのではなく、対象者の属性と学習へのコミットメントを見定めることから始めるべきです。
- 自分で勉強する習慣がある「技人国(大卒など)」であれば、就業時間外でもOK。
- 勉強する習慣そのものがない割合が高い「技能実習生(高卒など)」であれば、就業時間内での手配を推奨。
- 時間外で学習させる場合は、「特定技能1号への移行条件の明示」や「日本語能力に応じた昇給制度」を組み合わせて、お互いの目的が合致する仕組みを作る。
「日本語ができなくても仕事ができればいい」という層が一定数いる現実を受け止めた上で、自社の人材に合わせた最適な教育ラインを設計していきましょう。


