ベトナム人技能実習生の失踪は、深刻な社会問題であると同時に、企業にとっても大きな損失につながります。
背景には悪質な送り出し機関やブローカーの存在がありますが、受け入れ企業側の姿勢や待遇も大きな影響を与えています。
実習生に安心して働いてもらい、日本で充実した生活を送ってもらうために、企業が取り組むべき重要なポイントを整理しました。
1. 「安い労働力」ではなく「同じ人間」として尊重する
最も大切なのは、技能実習生を単なる「安い労働力」として扱わず、同じ人間として尊重することです。
企業から大切にされているのか、それとも雑に扱われているのかは、日本語が十分に理解できなくても必ず伝わります。
実習生の立場に立って考える姿勢があれば、「失踪」というリスクを冒そうとする気持ちは生まれにくくなるでしょう。
2. 適正な給与水準と労働条件を確保する
実習生が日本に来る最大の目的は「お金を稼ぐこと」です。実際、9割以上の実習生が残業を希望しています。
そのため残業の機会を提供するか、残業が少ない場合には皆勤手当や家賃補助などで手取り額を補填する工夫が求められます。
もちろん、労働法を遵守し、日本人が嫌がる仕事だけを押し付けるような不公平な待遇は避けるべきです。
3. 良好な職場環境と住環境を整備する
日本人が定着しない職場であれば、外国人材も長く働くことはありません。
低賃金、ハラスメント、有給休暇の制限など、自社で離職につながっている要因を洗い出し、改善に取り組むことが不可欠です。
良好な職場環境は、実習生の満足度を高めるだけでなく、日本人従業員の定着率向上にもつながります。
さらに、生活の基盤となる住環境の整備も忘れてはなりません。
4. コミュニケーションを工夫し、理解を深める
入国したばかりの実習生の日本語力は、小学校低学年程度と考えておく必要があります。
「全然日本語が分からない」と嘆くのではなく、受け入れ企業側が「やさしい日本語」を学び、積極的にコミュニケーションを図ることで、良好な関係を築けます。
5. 業務のマニュアル化を推進する
言葉の壁を乗り越えて業務を円滑に進めるには、仕事の手順を明確にしたマニュアル化が有効です。
これは実習生の習得を助けるだけでなく、社内の財産となり、日本人従業員の教育にも役立ちます。
最近はAI技術の進歩により、ベトナム語字幕付きの動画マニュアルも容易に作成できるようになっています。
まとめ
ベトナム人技能実習生の失踪を防ぐには、悪質なブローカーや送り出し機関を排除することも必要ですが、それは企業だけで解決できる問題ではありません。
企業にできることは、実習生を「人」として尊重し、適正な待遇と働きやすい環境を整えることです。
企業と実習生が互いに信頼関係を築ければ、失踪リスクは大幅に減り、持続可能な外国人材活用につながります。


