少し前の話になりますが…。
「入国したばかりの頃は、あんなに目が輝いていたのに……」
ベトナム人技能実習生を雇用する経営者の方から、このような切実なご相談をいただきました。

聞けば、導入から1年が経ち、実習生たちの意欲が目に見えて落ちているとのこと。
現場では日常的に厳しい指導(怒鳴る等の叱責)が行われており、どうやら彼らはその環境に「慣れて」しまったようです。

社長は「新しく入る実習生のやる気が、既存メンバーに良い刺激を与えてくれれば」と期待されていましたが、実はここには経営上の大きな落とし穴が潜んでいます。

「怒鳴る指導」が招く、最悪のシナリオ

私たち日本人の感覚では「厳しく育てて一人前」という美学があるかもしれません。
私自身も、若いころ高所作業の仕事をしていたので、何度も現場で厳しく怒鳴られて育ちました。

しかし、ベトナムの文化において「人前で怒鳴られること」は、耐え難い屈辱であり、修復不能なほど自尊心を傷つける行為です。

彼らが怒鳴られても動じなくなったのは、恐らく成長したからではありません。
「この会社では心を閉ざさないと生きていけない」と諦めてしまった、負の適応です。

この状態で新人を投入すると、どうなるでしょうか。
新人が真っ先に頼り、教育を受けるのは、会社の日本人スタッフではなく「母国の先輩」です。
もし先輩が会社に不満を抱いていれば、新人は一瞬でその毒気に当てられ、あっという間にやる気を失うでしょう。
「負の連鎖」の始まりです。

日本語を教える前に、まず「信頼の土台」を

実習生の意欲が低下したとき、多くの企業は「日本語をもっと勉強させろ」と教育を強化しようとします。
しかし、心の離れた人間にいくら知識を詰め込んでも、身にはつきません。

そうした場合、会社としてまず取り組むべきは、教育の強化ではなく「信頼関係の再構築」です。

  • 叱る時は別室で、一対一で: メンツを守る配慮が、彼らの聞く耳を開きます。

  • 「なぜダメか」を論理的に: 感情をぶつけるのではなく、改善のメリットを伝えます。

  • 彼らの背景に関心を持つ: 家族のこと、将来の夢。一人の人間として大切にされている実感が、仕事への責任感に直結します。

実習生は「鏡」である

ベトナム人実習生の姿は、現場マネジメントを映し出す鏡でもあります。
彼らが生き生きと働けない職場では、やがて日本人の若手社員も育たなくなります。

しかし、その逆も然り。
現場の指導方法をアップデートするチャンスと捉えることもできます。

ベトナム人従業員との意欲が著しく低下してしまっている…。
そのような場合は、早急に信頼の土台作りが必要です。