2月、ベトナムに拠点を置く日系企業の経営者や人事担当者にとって、もっとも胃が痛む季節がやってきました。
「テト(旧正月)休暇が終わったのに、あの社員が戻ってこない……」
昨日まで笑顔で働いていた右腕的存在が、休み明けに突然音信不通になる。
ベトナムビジネスにおいて、これは決して珍しい話ではありません。

「あんなに信頼していたのに」「ボーナスもしっかり出したのに」と裏切られたような気持ちになるのも無理はありません。
しかし、ベトナムの労働市場において、テト明けの離職はもはや「恒例行事」と言っても過言ではない文化的な側面があります。


【結論】テト明けの離職・失踪は「仕組み」で防ぐしかない

ベトナムにおけるテト後の離職率は一般的に5%程度と言われていますが、体感としてはそれ以上の衝撃を受けるはずです。
この記事を読むことで、ベトナム人の転職観の本質を理解し、日本国内の技能実習生にも共通する「一時帰国後の未帰還リスク」への対策を立てることができます。


1. なぜ「テト明け」に辞めるのか?その明確な理由

ベトナム人従業員がテト直後に退職するのには、合理的かつ文化的な3つの理由があります。

  • ボーナスの受取完了:テトボーナス(給与1ヶ月分程度)を受け取った直後が、年間でもっとも「損をしない」タイミングであるため。
  • 実家での親戚会議:帰省中に地元の友人や親戚から「うちの会社の方が給料がいいぞ」と誘われ、その場で転職を決めてしまう。
  • 拝金主義ではなく「上昇志向」:より良い条件を求めて動くことは、ベトナムでは不誠実ではなく「優秀さの証」と捉えられます。

現実:どれほど厚い信頼関係を築いていたとしても、ベトナムの転職市場は非常に流動的です。「右腕」であっても、条件次第であっさり入れ替わるのが日常茶飯事です。

2. 日本国内でも要注意!技能実習生の「一時帰国」に潜むリスク

この問題はベトナム国内に限った話ではありません。日本で働く技能実習生の間でも、テト休暇を利用した一時帰国後にそのまま日本に戻らない(失踪・離職)ケースが散見されます。

彼らは最初から戻らないつもりで準備をしているため、以下のような兆候が見られる場合は注意が必要です。

チェックポイント 具体的な行動
身辺整理 寮の荷物を実家に送る、または処分している。
SNSの更新 帰国直前からSNSで現地の求人情報を探している。
借金の清算 友人知人からの借金をすべて返済し終えている。

まとめ:2月の「頭痛」を最小限にするために

ベトナムの転職文化を変えることは不可能です。
経営者に必要なのは、「人は必ず辞めるもの」という前提に立った組織づくりです。

  1. マニュアル化を進め、特定の人間に依存しない業務フローを作る。
  2. テト休暇前に、休暇後のスケジュールを具体的に握っておく。
  3. 一時帰国する実習生の「荷物量」や「部屋の様子」に、さりげなく注意を払う。

この2月の荒波を冷静に乗り越えていきましょう。