「日本人とベトナム人は文化的にも近く、親和性が高い」……。
ビジネスの現場でもよく耳にする言葉です。
確かにお互いを尊重する姿勢や勤勉さなど、似ている面は多々あります。
しかし、企業内で共に働き、成果を出そうとする際、「致命傷」になりかねない決定的な価値観のズレが存在することをご存知でしょうか?
ベトナムで四半世紀暮らし、現地の市井の人々と酸いも甘いも共にしてきた私の視点から、その「壁」の正体と乗り越え方を解説します。
この記事の結論:ベトナム人との共働を成功させるカギ
- 主張:日本人とベトナム人の決定的な違いは「細部への執着心」にある。
- 理由:日本人は「細部に神が宿る」と考えるが、ベトナム人は「形(本質)ができれば良し」と考える文化。
- メリット:このギャップを仕組みで埋めることではじめて、彼らは戦力へと変わる。
1. 「細部に霊が宿る」日本人と、「形になれば良し」のベトナム人
プロフェッショナルのこだわりを語る際、日本人がよく使う「細部に霊(神)が宿る」という言葉。
一見どうでもよさそうな微細な部分にこそ本質が表れ、その積み重ねが全体のクオリティを決めるという考え方です。
対して、ベトナム人のスタンスは極めて対照的です。
「本質(アウトライン)さえ捉えていれば、細部にはこだわらない」
良く言えば、大らかで柔軟な国民性。
悪く言えば、その無頓着さが製品やサービスの質を損なう原因となります。
時には、その細部への軽視が、守るべき本質そのものを脅かすことすらあるのです。
2. 現場で繰り返される「致命的な齟齬」
日本の製造現場で、よく繰り広げられる光景があります。
日本人:「これ、2回使ったら一度洗浄するように言ったよね。どうしてやっていないんだ!」
ベトナム人:「ダイジョウブ。洗浄しなくても、ほら、製品はできてます。」
日本人:「だから、その製品の質が落ちてクレームになるんだよ、何度も言っただろ!」
ベトナム人:「……? 製品は形になってますけど?」
日本人は激怒し、ベトナム人は「なぜ怒られているのか分からない」と困惑する。
この不幸なすれ違いは、ベトナム人にとって「製品が形になっている=任務完了」という意識が根底にあるからです。
彼らにとって、洗浄の有無は「どうでもいい些細なこと」に過ぎません。
3. 感情論ではなく「論理と仕組み」で解決する
「ルールだから黙って従え」と押し付けるのは、最も避けるべき悪手です。
彼らの意識を変え、組織として機能させるには以下の3ステップが不可欠です。
| 順序 | 実施すべきこと |
|---|---|
| 1 | 「なぜ」ここまでしなければいけないのか、背景を説明する。 |
| 2 | 「もしやらないと」どういう悪い結果を招くかを明確にする。 |
| 3 | その結果に対しての「賞罰(評価基準)」を明確に設ける。 |
そして重要なのは、「一度言えば伝わる」という幻想を捨てることです。
意識の外に消えてしまうことを前提に、母国語翻訳を入れたマニュアルを作成し、何度も根気強く教育を繰り返す必要があります。
まとめ:教育の先にある「大きな戦力」
「ここまでしなきゃならないのか……」と、ときには気が遠くなるかもしれません。
しかし、細部への意識を共有し、仕組みとして定着させることができれば、彼らは見違えるほど頼もしい、組織の大きな戦力へと成長してくれます。
文化の違いを嘆くのではなく、違いを前提とした「教育と仕組み」を構築すること。
それこそが、ベトナム人との仕事を成功させる道なのです。


