日本では「努力次第で誰でも上に立てる」という現場主義・実力主義的な考え方が根強くあります。
しかし、ベトナムでは少し事情が異なります。
実はベトナムは意外なほど、学歴重視社会なのです。
大学を卒業しているかどうかが、社会的な評価や人間関係に大きく影響します。

ベトナム国内では、同じ職場であっても高卒のワーカー層と大卒のマネージャー層の間に、はっきりとした心理的な壁がある場合が非常に多いです。
仕事上での会話はあっても、プライベートで親しくなることや、交際・結婚に発展することは非常に稀。
それほどまでに、学歴の差が人間関係にも大きな影響を及ぼすのです。

この傾向は職場でも顕著です。
極端な言い方をすれば、「自分より学歴が低い人の指示は聞きたくない」と感じる人が、日本よりもずっと多い印象です。
大卒の社員が高卒の上司に指導される状況には強い抵抗感を示すことがしばしばあり、駐在の日本人の方々の悩みのタネになることも少なくありません。

そのため、日系企業がベトナムに進出し、日本で技能実習を終えた元実習生を「現地リーダー」として登用する際には、特に注意が必要です。
日本での経験や技術力を高く評価してリーダーに任命しても、学歴面で部下からの信頼を得られず、チーム運営が難航するケースが少なくありません。

もちろん、元実習生の多くは勤勉で誠実、現場感覚にも優れていることでしょう。
しかし、学歴を重視する社会の中では、それだけでは十分ではないというのが、重い現実です。
リーダーを任せる場合は、まず周囲の大卒スタッフとの関係性をどう築くか、また本人にどのようなサポートを行うかが、想像以上に大きな問題になります。

ベトナムへの進出を検討されている企業様も、少なからずあるかと思います。
その際の人材マネジメントには、「能力」だけでなく「学歴」という社会的背景を理解することが欠かせません。
難しい問題です。